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●今のお仕事は?
今は、「FFXIII」の開発に。3Dソフトでモデリングをして、今、私のいるプロジェクトは次世代機向けの開発チームなので、ポリゴンでモデリングをした上から更にスカルプトツールを使用してより繊細な仕事をこなします。例えば、レリーフ状のミゾとか、しわとか。モデリングの段階ではデータが重くなるから形を作らない、今までテクスチャーで補っていたような領域にモデラーが関わるようになってきています。質感表現とまでいかないけれど、今までのモデラーの仕事から比べるとはるかに細かな表現ですね。質感表現ととらえるか、それより大きな形ととらえて作るか、微妙な部分は、テクスチャ側と相談になります。
●スカルプトツールはいわゆる汎用性のツールなんですか。
汎用性のツールですね。よりリアルな表現が求められるようになったから使うんですけど、ペンタブレットを使ってモデルに加筆修正するんですよ。ミゾ1つ作るにも、ポリゴンを切っていくよりもはるかに早く、楽に、絵を描くように形ができます。強く描いたところは大きく出っ張る、或いはへこむ、弱く描けば、弱く。本当に細かくしようと思えばそれこそ、皮膚の表面まで描けますよ。モデラーにはそこまで要求されてないですけどね。
●それはテクスチャーを貼っていくことではないわけですか。
テクスチャーを貼るところまではやらなくて、テクスチャーに必要な要素のうちのノーマルマップ、法線情報を作成するのが目的なんですよ。スカルプトツールで細かいところまで彫り込んで、彫ったモデルから、どこがどういう方向に出っ張ったりへこんだりしているのか、という情報をはぎとって、テクスチャに組み込むわけです。
●今の職種に就けてよかったと思うことは?
よかった点は、自分が今まで身につけてきた力を仕事にそのまま生かせているという点です。
●具体的に言うと?
観察したことを絵で表現する力。予備校時代にひたすらデッサンを勉強して、形をとる訓練をしたことが今、役に立っているなと思います。デッサンて、修正することが一番の目的だから、描いた形がなんか違う、じゃあどうしたら良くなるのか、自分で考えたり、人の意見を取り入れたりして、手をうごかして試行錯誤しながら、目的の形に近づけていく。そういう流れのなかで、単純に形をとること以上に、なにか問題に気付いて、解決しようとしたり、納得のいくまで作り込みたいという意識を高められたことも、今の自分を支えていると思います。
●なるほど。では、ゲームクリエイターもしくはテザイナーにとって必要な条件みたいなものは。
表面的には、デッサン力とか、想像力。内面的なことでいうと、いい物がつくりたいとか、1つの物を完成させたいという執念。デザイン画に忠実に、でも、説明されていないところは、そのキャラクターの持つ印象に近づけながら想像で補完する。アートデザイナーが描くデザイン画って、実際に、どこかの山奥や秘境で見つけてスケッチしたものではないですよね。多方向からの説明図があっても、それが完璧につじつまが合うとも限らない。空想で描かれた2Dの生物を3Dでいかに実際にありそうに、現実味を帯びたものに作り上げていくかを考えた時、対象をじっくり観察する力に加えて、複数のデザイン画を頭の中で統合して、全体のイメージを作り上げたり、印象を保ちつつ足りないところを補う想像力が必要になってきますね。
●デッサン力がないとできないですかね。
デッサン力は必要です。それから、もちろんコンピューターが使えることも必要です。実際、データはパソコンを使って作らないといけませんから。ただ、形はとれるのに、この機能を知らなかったせいでものすごく遠回りをしていた、とか、逆に、コンピューターは使いこなせるけど、この形をつくるのにすごく苦労した、なんてこともあるやもしれませんよね。何が欠けても、何かに偏りすぎるのもどうかと思います。こういうことって、目的があれば、必ず克服できるものなんですよ。いいものを世に出したい、最後まで自分の力でやり遂げたい、うまくなりたい、カッコイイものがつくりたい、コンピューターに詳しくなりたい、何でもいいから、自分はこうしたいっていう執念があることが大事です。そうでなければ、私自身、今頃この仕事についていなかったと思いますよ。
●どういう観点で観察しているのですか。
いろいろです。もともと、平面上に表現する世界にいましたから、個人的な目線の観察でいうと、今見ている景色や物を”1枚の絵”としてどうしたら面白く見せられるか、色味や質感、アウトライン的な形の面白さだとか、1枚の紙にこの形や色をどう納めたらどういうバランス感覚の絵ができあがるか、とか。機械的にデッサンばっかり描いていた頃は、物と物の距離感、空間感、量感だとか。今は、仕事上は後者に近いですね。物のもつボリューム感を捉えるのは大事で、これひとつで、迫力がだいぶ変わりますから。あとは、実際の作業中によくあることなんですけど、座標上の頂点を移動して形を作っていく際に、正面から見てy軸方向に移動したと思ったのに、z軸に動いていて、形が陥没してた、とか、トップからみてx軸方向に移動したと思ったのに、とんでもない方向に形が伸びていたとか。一方向からでは計り知れないことがあるわけです。2Dのような見せかけではない奥行きを持った形を扱う上で、3次元の形を把握する観察力は大切だと思いました。
●普段、意識していなければ見ないですよね。
そうですね。ただ見るのもいいけれど、一番手っ取り早いのは触る。ぺたぺた。触って、転がしてみる。意外と大きかった、とか。ここの形は意外と複雑だった、とか。
●なるほど。ずっと前からそういう観察をしていたんですか。小さいときから。
癖なんですよ。まじめに、観察するという意味で。
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