FINAL FANTASY XII THE ZODIAC AGE: A stroll through the thriving commercial center of Rabanastre
2023.01.31
これからお話しするのは、どこにでもいる社会人のぶらり旅の記録であるーー
今の会社に入って、もう何年になるだろうか。入社当時の僕はといえば、新しい環境や新しい人、まぁとにかくたくさんの新しいものに揉まれながらも、なんだかんだ刺激的で飽きない日々を送っていた気がする。
と、センチメンタルに遠くない過去を振り返ってしまうほどには、連日のルーチンワークで心が凝ってしまっている。凝るのは首と肩だけにして欲しいところだけど、そうもいかないみたい。
そういえば、風の噂によると、イヴァリースの王都ラバナスタは新しい執政官の就任パレード以降、観光客が減ってきているそうだ。以前、はじめてのイヴァリース旅行の地としてラバナスタを選んだときも、パレード等があってとても賑わっていたし、その後のアルケイディア帝国との戦争以降も、なんだかんだで近隣国との貿易の要として栄えてきていたはずだ。ここに来てどうしたんだろう。
ええい、ままよ。余っていた有給休暇を申請して、凝ってしまった心をどうにかしたい気持ちを抱えながら、王都ラバナスタまで足を延ばす。
アクセスの不便さは飛空艇定期便でカバー
王都ラバナスタは砂漠や草原に囲まれているため、行き帰りはバート交通公社の飛空艇定期便がオススメだ。ショッピングや景色をゆっくり楽しめる「ゆったり飛空艇」と、とにかく早く到着する「高速飛空艇」の2種類が用意されていて、気分に合わせて好きな方を選べるのがポイント。ちなみに、どちらも同じ料金なので、僕は毎回ゆったり飛空艇を選ぶ。
展望ロビーでおみやげの「ギサールの野菜」を購入。少し匂いがキツイが、それがまた良い。まだ往路なのに、気持ちが浮ついてしまっている。いけないいけない。
飛空艇の速度がそこまで速くないので、展望デッキで強めの風を体で感じておくのも忘れない。
強めの風で心をほぐしていると、恰幅のいいバンガ族のおじさんに話しかけられてしまった。城塞の補修作業でナルビナに出稼ぎに行っており、久しぶりにラバナスタに帰ってきたらしい。僕と似たようなもんだな。
旅の始まりは飛空艇ターミナルから
降り立ったのはラバナスタ正門の飛空艇ターミナル。前にここに来たのは、たしか2006年のことだから、13年ぶりになる。ラバナスタは北にそびえ立つ王宮をランドマークに、東西南北に地域が分かれているのだけれど、これがあまりにも広すぎて、住んでいる人ですら迷ってしまうらしい。当然、僕も完全に忘れてしまっている。ここはスマホの電波も届かないし、文明の利器を捨て、地図屋さんでマップを購入することにしよう。
ターミナルを出てすぐの所に、この地方の名物のひとつ「チョコボ屋」がある。チョコボは、こちらの地方ではメジャーな移動手段のうちのひとつだ。それにしてもこの巨体と、綺麗な黄色い羽は特徴的だと思う。ダチョウ的な走鳥類の一種だろうが、こんな生き物は日本ではさすがにお目にかかれない。跨って大地を疾走する欲望に駆られたが、今回の旅の目的はここ、ラバナスタだ。飛空艇で購入したお土産のギサールの野菜を少しだけ分けてあげて、ラバナスタの中央、外門前広場へ向かう。
東西南北の交差点、外門前広場
空路でラバナスタを訪れたなら、必ずこの外門前広場を通過することになる。広場の中心にそびえ立つ立派な噴水のおかげで、どことなくマイナスイオン的な何かが充満している気がしないでもない。いいんだ。気がするだけで体に良い。それがマイナスイオンなのだから。
外門前広場を通る時は、ぜひ北に見える王宮を眺めていってほしい。同じ都市内にある建物なのに、遠すぎてかすむほど、ラバナスタが広いことを実感できる。
帝国兵の監視員さんも、お疲れ様です。仲間を見つけたような気がして、すこし心がほぐれる。
まずは腹ごしらえ!ムスル・バザー
さて、広いラバナスタを散策するためにも、まずは腹ごしらえ。ラバナスタ西部、バザー区画の「ムスル・バザー」へ向かう。一歩足を踏み入れると、他の地域とは比べ物にならないほどの賑わい。行き交う人たち、客を呼び込む店員の活気で、喧騒のボリュームがドッと上がる。
目移りしてしまうくらいの品揃えなのだけど、お腹いっぱいになってしまって動けなくなっては元も子もない。青い肌のシーク族のおじさんが売っていた「ナンナの乳でつくったチーズ」を購入して食べ歩き。おいしい。
ムスル・バザーは食べ物だけじゃなくて、骨董品や道具なんかもたくさん売られていて、まさに「バザー」って感じ。地元の人に聞いたところ、ムスル・バザーはラバナスタ市民にとってもガス抜きの場所らしい。帝国の領地になってから街中に行き渡っていた兵士の監視が、ここでは少し緩むそうだ。なるほど、ラバナスタも大変なんだなぁ。
見つけることすら試練!クラン・セントリオ本部
ナンナのチーズをつつきながら東部に向かおうと歩いていたら、よくわからない建物に迷い込んでしまった。13年ぶりだとはいえ、地図を見ながら歩いていたのに...!
一番偉そうな場所で、白く小さい身体を踏ん反り返らせているモーグリ族のお兄さんに聞いてみると、どうやらここはクラン・セントリオの本部のようだ。よく見つけたなと褒められたものの、あいにく僕はクランのメンバーではないし、モブハントもしない。
周りを見渡してみると、名を上げようと精力的に活動するハンターたちがひしめいていた。背の高くてスラっとした、あるヴィエラ族の女性は「自分の腕を確かめるため」、バンガ族の男性は「一攫千金のため」に、今日もクラン活動に勤しんでいるそうだ。そんな彼らを見ていると、連日のルーチンワークで腐りきり、初心を忘れている自分が少し情けなくなった。そうだな、せっかく褒められたのだから、帰国したらいっそのこと、ムカつく上司をモブハントして...なんて。見習うのは初心を振り返るところだけにしておこう。
図らずもクランメンバーになってしまうところだったけど、僕には帰るべき居場所がある。本来の目的地だった東部のダウンタウンへの道のりを教えてもらって、クラン本部を後にした。
秘密基地感ただようダウンタウン
今度はラバナスタ東部の地下街へ。地上の活気とは打って変わって、物静かで秘密基地的な魅力があるこのダウンタウンは、もとは商人たちが倉庫や荷物の集積場として使っていた場所だ。しかし戦争後、ラバナスタ市街に住んでいた人たちがここに移り住んできて、居住に適した環境に整えられてきた。なんて、歴史に思いを馳せながら、お店の照明だけで優しく照らされた地下道を歩く。
東ダルマスカ砂漠の大河から流れ込んでくる水は、ダウンタウンの人たちに憩いの場を提供している。地上を追いやられてもなお、こうして生きている人たちの静かな強さに触れると、自然と力が湧いてくるようだ。
旅の最後は砂海亭で祝杯を
さぁ、この旅も大詰めだ。ダウンタウンから再び地上に上がると、空は暗く、街には夜の賑わいが訪れていた。
そろそろ腰を落ち着けたい。そんなときはラバナスタ市民に人気の酒場「砂海亭」で乾杯。さすがは酒場、いろんな種族の人たちであふれていて、ラバナスタの縮図という感じがする。
砂海亭は、モンスターの退治依頼、通称「モブハント」の受注場所にもなっている。こうやって掲示板にモブが張り出されると、報酬目当てで街の外へ繰り出す者も少なくないらしい。
掲示板のおかげもあって、ここは市民の溜まり場になっている。
何気なく2階の席に座って階下を眺めていると、異国民である僕を気にかけてくれたのか、店員が静かに話しかけてきた。
聞くところによると、実はこの2階、一般の客が使えるようになったのはここ最近になってかららしい。戦争のあと、長らく帝国兵の溜まり場になっていたが、新しく就任した執政官によって、それが解消されたのだという。それからというもの、再び陽気なおじさんたちが楽しめるようになったそうだ。
活気と人間味にあふれた街、ラバナスタ!
帰りの飛空艇に乗りながら、ラバナスタの人たちを想う。戦争の後、ここ何年かであの街は大きく変わった。良いも悪いもあるけれど、それでもラバナスタの市民たちが毎日を力強く生き抜いているのを目の当たりにすると、僕もまだまだ負けてられないな。
しかし、なぜ観光客が減ってきているのかは、結局のところわからずじまいだった。もう少し長い時間滞在すれば何かわかったのかもしれないが、時間的にも今回の旅はこれでお開き。
でも良いのだ。ラバナスタへはいつだって、なんどだって足を運べる。13年前はいざ知らず、あらゆるモノゴトが美しく、便利になった今なら、まるでゲーム機をさっと起動するかのように、イヴァリースの地へ赴くことができる。
あなたもぜひ、ラバナスタに限ることなく、彼の地の現状をその目で確かめてみて欲しい。
凝り固まった心が、良い具合に解けるかもしれない。
(終)